Bubbles in a pool

よどみに浮かぶうたかた

品川心中

古今亭志ん生の落語で初めて聞いたのは「品川心中」で、以来落語の中では一番好きかもしれない。
お染めという品川の花魁が、紋日の移り替え(衣替え。金がかかる)ができなくて、恥をかくくらいならいっそのこと死んだ方がましだと考える。でもひとりで死ぬのはお金がなくって苦し紛れに死んだと言われる、それが癪だ、誰か相手探して相手と死のう、そうすりゃ心中ということになる、と相手を捜す。選ばれたのは人間がすこしへんてこな本屋の金蔵。お染めは自分から心中しようとは言い出さない。金蔵から切り出させる。さすが海千山千の花魁。

金:おめぇ、何かい、ほんとうに死のうってのかい
染:そうだよ
金:じゃ、おれも死のう
染:死ぬんだよ?
金:死ぬよ、死ぬんだよ
染:ほんとに死ねる?
金:死ねるよ、死ねねぇと思ってんのか、おめぇ。えぇ?なら手つけに目を回そうじゃねぇか
染:ああ、嬉しいねぇそんな人だと思わなかったがねぇ死んでくれるかい?じゃ今夜ね

湿っぽさなどない。からからに乾いて、ひょいと生と死の境い目をまたぐ決意。この乾き加減が、自分の泥沼のような気分を癒す。生の未練も薄いが、死への未練も薄い。ひょいとまたぐからひょいとこの世へ返って来る。心中しそこねた後のお染めの台詞もいい。

染:ちょいと!金さん!おまえさん早かったよ、少し。アタシお金ができたんだとさ。できりゃおまえさんあたしだっていろいろ用があってね、今すぐ死ねないんだよ。でおまえさん飛び込んじゃったもんだからしょうがないからがまんしちゃってね、うん、じゃどうかすいませんが・・・いろいろお世話になりました。どうも失礼!

本格的に落語にハマって来たなぁ。高座観たいなぁ。