Bubbles in a pool

よどみに浮かぶうたかた

落語ブームらしいね

話がうまいひとに憧れがある。自分がどうしようもなく話下手であると自覚しているから。言葉が足らない、順番がバラバラ、思ったことから口にしてしまうから相手はオレが何を言いたいのかわからない。オレの思考を読みとって言葉にする奇特な友人がいるが、なんでこいつはうまく言葉にできるんだろうとはたはた感心する。映画を見た、本を読んだ、その面白さを伝えきれないもどかしさと言ったら・・・。
で、落語。話がうまいひとになるにはお手本は落語家だと短絡的に考えて、少しずつ聞いたり読んだりしているわけだが、その凄みをしみじみと思い知らされるここ最近。筋から情景描写から人物描写から何から何まで創りあげた上で、かつそのすべてをたったひとりで演じきる。映画で言えば脚本・監督・出演を全部こなしているわけで、いやはやそら恐ろしい。その世界の中で立川談志はまごうことなき天才であり、その一端をうかがい知れるのがこの本。

赤めだか

赤めだか

よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。いいか、落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ。それが基本だ。P64

あのな坊や。お前は狸を演じようとして芝居をしている。それは間違っていない。正しい考え方なんだ。だが君はメロディで語ることができていない、不完全なんだ。それで動き、仕草で演じようとすると、わかりやすく云えば芝居をしようとすると、俺が見ると、見るに堪えないものができあがってしまう。型ができてない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。どうだ、わかるか?難しすぎるか。結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ。P72

抜粋したのは落語に対する考え方のところだけだけれども、しびれるような言葉が他にもたくさん詰まっている。立川談春の文才もただもんじゃなく、落語論として人生訓としてこんなとてつもない本に出逢ったことを幸せに思う。